


子宮の入り口付近、「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」にできるがんを、「子宮頸がん」といいます。子宮にできるがんには、他にも、赤ちゃんが育つ「子宮体部(しきゅうたいぶ)」にできるがんがあり、「子宮体がん」別名「子宮内膜(ないまく)がん」と呼びます。
世界では年間約50万人が子宮頸がんを発症し、約27万人がこの病気で死亡していると推計されています。これは2分間に1人が子宮頸がんで命を落としていることに相当します。
女性性器に発生するがんは、子宮頸がんと子宮体がんが多数を占めます。子宮頸がんと子宮体がんは“子宮がん”として混同されがちですが、同じ子宮に生じるがんでありながら、発症には子宮頸がんはウイルスが関与するのに対し、子宮体がんの多くは女性ホルモンが影響するなど、まったくタイプが異なるがんです。子宮頸がんは子宮の入り口である頸部に発生する上皮性の悪性腫瘍であり、婦人科悪性腫瘍のなかで最も頻度が高いものです。
一方の子宮体がんは子宮内膜に発生する悪性腫瘍で、ほとんどが腺がんであります。また、子宮頸がんの発症患者は30歳~40歳代が多く、前がん病変と早期がんは20歳~30歳代に多くみられます。これに対し、子宮体がんの発症は80%が50歳以降であり、50~60歳代にかけて好発します。
子宮頸がんは原因やがんになる過程がほぼ解明されている、予防ができるがんです。また、定期的に検診を受けることで、がんになる前に発見し、子宮を失わずに治療することが可能です。
FIGO分類を素に作図
出典:子宮頸がんガイドライン.2007より
“扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん”と“腺(せん)がん”
がんの名前は“がん”ができた臓器の名前で呼ばれることが多く、“子宮頸がん”も、子宮頸部にできるがんなので、このように呼ばれています。しかし、同じ臓器にできるがんでも、がんになる細胞の種類が異なると、病気の進行や治療方法に影響が出ることがあります。
子宮頸がんの場合は大きく2種類にわけることができます。ひとつは、子宮頸部の表面を覆う“扁平上皮細胞(へんぺいじょうひさいぼう)”からできた“扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん”で、もうひとつは、粘液を分泌する“腺細胞(せんさいぼう)”からできた“腺(せん)がん”です。腺(せん)がんは、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんと比べて子宮頸がん検診で見つけにくく、治療も難しいといわれています。ほとんどの子宮頸がんは扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんですが、最近は腺(せん)がんも増えてきています。


子宮頸がんは、初期には全く症状がないことがほとんどで、自分で気づくことはできません。そのため、不正出血やおりものの増加、性交のときの出血などに気がついたときには、がんが進行しているということも少なくありません。
がんが進行すると、子宮をすべて摘出する手術が必要になることもあり、妊娠、出産の可能性を失い、女性にとって心身ともに大きな負担となります。また、まわりの臓器にがんが広がっている場合には、子宮だけではなく、そのまわりの卵巣やリンパ節などまわりの臓器もいっしょに摘出しなければならなくなり、命にかかわることもあります。
不正性器出血や月経異常など初期の段階から何らかの自覚症状が現れる子宮体がんに対し、子宮頸がんは初期段階では自覚症状がほとんどなく、検診により発見されることが多いものです。進行するにつれ性交時の出血や帯下の異常がみられ、さらには悪臭を伴う膿血性の帯下、不正性器出血、下腹痛や発熱などが認められるようになります。
滋賀朋子ほか:人間ドック21(3),704-707,2006より作図


『がん』と聞くと、身近な家族や親戚にがんになった人がいるとなりやすいというイメージがありますが、子宮頸がんは遺伝などに関係なく、性交経験がある女性なら誰でもなる可能性のある病気です。近年では20代後半から30代に急増、若い女性の発症率が増加傾向にあります。子宮頸がんは、がんによる死亡原因の第3位、女性特有のがんの中では乳がんに次いで第2位を占めており、特に20代から30代の女性においては、発症するすべてのがんの中で第1位となっています。
国立がんセンターがん対策情報センター
1)祖父江友孝ほか:がん・死亡動向の実態把握の研究(平成18年度)
2)厚生労働省科学研究費補助費第3次対がん総合戦略研究事業 がん羅漢・死亡動向の実態把握の研究
平成18年度 総括・分担研究報告書(主任研究者 祖父江友孝),2007年4月公開
国立がんセンターがん対策情報センター、人口動態統計(厚生労働大臣官房統計情報部)
全世界で毎年、27万人もの女性が子宮頸がんによって大切な命を失っています。これは時間に換算すると約2分間に1人の割合。日本でも、毎年15,000人(上皮内がんを含む)が子宮頸がんと診断されています。
出典:GLOBOCAN 2002


子宮頸がんの治療法には、主に手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤による治療)があり、がんの進み具合やがんの部位、年齢、合併症の有無などによって治療法を決定します。初期のがんであれば、妊娠の希望を考慮することもできます。
一般的に、がんになる前の状態(前がん病変(びょうへん))やごく初期のがんでは子宮頸部の異常な組織を取り除く手術;円錐(えんすい)切除術(せつじょじゅつ)を行います。進行した子宮頸がんに対しては、いくつかの治療法を組み合わせて行うこともあります。
子宮頸がんの進行は、がん細胞が子宮頸部の粘膜上皮にとどまっている状態の0期から、子宮のまわりの臓器や他の臓器にまで転移するIV期まで、段階によって分類されます。0期またはIa1期までのごく初期に発見できれば、子宮頸部(けいぶ)の一部を切り取る手術(円錐切除術)だけで済み、妊娠も出産も可能です。
Ia2期以降になると子宮の全摘出を行なうようになり、II期では卵巣や卵管も含めて子宮をすべて取り除く手術(広汎(こうはん)子宮全摘)が必要になります。また、さらにがんが進行した場合、放射線治療や化学療法が行われます。広汎子宮全摘出術の代わりに、放射線療法を行ったり、手術療法と放射線療法を組み合わせたりすることもあります。また、手術の前にがんを小さくすることを目的に抗がん剤を使用したり、放射線療法の効果を高めるために放射線療法と化学療法を同時に行ったりすることもあります。
前がん病変(びょうへん)やごく初期の子宮頸がんであれば、子宮頸部の異常な組織を取り除く「円錐切除術」のみで治療が可能です。これは、子宮頸部をレーザーや高周波メス(電気メス)で円錐状に切りとる手術です。円錐切除術は子宮を摘出しないため、術後に妊娠・出産が可能です。
なお、円錐切除術で切り取った組織を詳しく検査した結果、進行した子宮頸がんであることがわかった場合には、子宮を摘出する手術など、より積極的な治療が必要になることがあります。