- 1. 妊婦、授乳婦へのHPVワクチン接種はどのような規定になっていますか?
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妊婦へのHPVワクチン接種は勧められません。このワクチンと妊娠の転帰や胎児の発育障害との関連性は認められていませんが、安全性に関するデータが不足しているからです。
自然流産は25.0%、新生児死亡は1.1%、先天奇形は1.5%で、いずれもプラセボ群と差がありませんでした。最初のワクチン接種後に妊娠が判明したときは、以降のワクチン接種は、分娩後にすべきとされています。
もし、ワクチン接種後に妊娠が判明したとしても、人工妊娠中絶の必要はありません。なお、授乳中の女性はワクチンの接種が可能とされています。
- 2. 発がん性HPVは性交渉で感染すると聞きました。私は男性経験が多くないから、検診を受けなくても大丈夫ですか?
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多数のパートナーとの性交渉は、子宮頸がんのリスクを高めるといわれていますが、直接の原因ではありません。
パートナーが1人の場合でも子宮頸がんになる可能性はありますので、必ず検診を受けましょう。
- 3. ワクチンを接種すれば子宮がん検診を受けなくても大丈夫ですか?
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子宮頸がん予防ワクチンは、特に子宮頸がんになりやすいHPV16型と18型の感染を予防しますが、すべての発がん性HPVの感染を防ぐものではありません。
子宮頸がんを完全に予防するためには、ワクチン接種後も定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。
- 4. 性交渉の経験があるので、すでに発がん性HPVに感染しているかもしれません。ワクチンを接種しても効果は期待できませんか?
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現在発がん性HPVに感染しているとしても、今後自然に排除される可能性が高いです。しかし、このウイルスは何度も感染することがあるため、ワクチンを接種して次の感染を防ぐことが大切です。
ただし、ワクチンは接種前に感染している発がん性HPVを排除したり、発症している子宮頸がんや前がん病変の進行を遅らせたり、治療することはできません。
- 5. HPVは誰でも感染しますか?
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性交渉経験のある人であれぱ誰でも感染する可能性があります。
HPVに感染することは決して特別なことではなく、性交渉経験者の50~80%は少なくとも一度はこのウイルスに感染したことがあると考えられています。
- 6. HPVは男性にも感染しますか?
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HPVは性交渉で感染しますので、当然、女性から男性に、男性から女性にと性交相手に感染します。しかし、男性の感染の詳しい実態はまだわかっていません。
- 7. HPVに男性が感染した場合、どのような病気になりますか?
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男性ではHPVが原因となる病気はほとんど見られませんが、ごくまれに見られる陰茎がんはHPV感染が原因だと考えられています。また、別のタイプのHPV(低リスク型HPV)は尖圭コンジローマと呼ばれる性器にできるイボの原因ウイルスになります。
- 8. コンドームを使用していればHPVに感染しませんか?
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HPVはコンドームで被いきれない部分の皮膚の接触によっても感染するため完全な防御とはなりません。しかし、コンドームの使用は感染の危険性を少なくすることは出来ます。
- 9. 高リスク型HPVに感染すると必ず子宮頸がんになりますか?
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高リスク型HPVに感染するだけでは子宮頸がんになる危険性はほとんどありません。多くは、免疫力によってウイルスが体内から排除されますので、子宮頸がんになることはありません。
しかし、ウイルスを排除することが出来ずに感染が長期に持続した場合には(持続感染化)、平均で10年以上を経て、子宮頸がんに進行する可能性があります。
- 10. HPVが原因でない子宮頸がんもあるのでは?
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子宮頸がんの99.7%からHPVが検出されるという事実があります。例外がないとは言い切れませんので、HPVによらない子宮頸がんも存在するかもしれません。
ただし、80~90年代の論文では遺伝子検査技術の水準が現在ほど高くないため、HPVが検出されない子宮頸がん症例も報告されています。
- 11. 低リスク型HPVも子宮頸がんを引き起こすことはありますか?
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低リスク型HPVは一般的にがんに進行するリスクはない、つまりノーリスクと考えられています。
子宮頸がんの組織からもHPV6型などが検出されることがありますが、これは他部位に感染しているHPV6が検体に混入したものと考えられます。このようなケースでは高リスク型HPV型も同時に検出されるはずですが、コンセンサスプライマーを用いた検出などでは、1種類のHPV6型のみが優位に増幅されるため、ハイリスク型が検出されないこともあります。
- 12. HPVの持続感染とはどういう意味ですか?
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HPVに感染してもほとんどの人は知らないうちに治癒します。しかし、約10人に1人くらいはHPVが自然排除されないで感染が長期化します。これがHPVの持続感染です。
- 13. HPVは通常、どのくらいの期間で消失するのですか?
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通常、HPV感染の約70%は1年以内に、90%以上は2年以内に自然に治癒します。
HPV検査で陽性であった場合、間隔を空けて再度検査を受けることにより持続感染かどうか判断できます。また、持続感染後であっても自然に消失することは少なくありません。
- 14. 子宮頸がんは増えているのですか?
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子宮頸がんの罹患率はここ10年間で横ばい状態でしたが、ここ数年でやや増加の兆しがあります。発症年齢のピークは、ここ10年で、50~60歳代から、30~40歳代と若年齢化傾向にあり、がんになるまえの前がん病変は20~30代で著しく増加しています。
- 15. HPV感染の治療は出来るのですか?
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HPV感染はほとんどが免疫により自然消失するため治療は行いません。また、HPVに対して有効な薬剤はありません。HPV陽性の場合はフォローアップを行い、HPVによって子宮頸部に異形成を生じ、それが治療を要する程度まで進行した場合は病変の程度に応じて、治療を行います。
- 16. ヒトパピローマウイルス(HPV)とは何ですか?
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ヒトパピローマ(乳頭腫)を形成する一連の小型DNAウイルスをパピローマウイルス(PV)と呼び、ウイルスで、当初はその名前にあるように皮膚にみられる良性腫瘍である乳頭腫(いぼ)の原因ウイルスとしてその存在が確認されていました。HPVは、培養細胞や実験動物で増殖させることができないために、その特徴の解明が遅れていました。1980年代になってDNA組み換え技術の進歩により、それまで確認できなかった尖圭コンジローマやがん組織からHPVが確認されたことから、一躍注目されるようになりました。
その後このウイルスが産生する蛋白質が、がん抑制遺伝子産物であるRbやp53を不活性化したり、テロメレースを活性化することが知られて、現在ではウイルスによるがん化(ウイルス発がん)の原因ウイルスの1つとして広く知られるようになりました。
洗賛状表皮発育異常症に発生する皮膚がんや子宮頸がんの原因ウイルスとしてだけではなく、口腔がん・咽喉頭がん・外陰がん・膣がん・肛門がん・陰茎がんの発生にもかかわりがあることが報告されています。
2008年にはzur HausenがHPVと子宮頸がんの関連を解明した功績によりノーベル医学生理学賞を受賞したことは記憶に新しいことです。
- 17. HPVにはハイリスクとローリスクの2種類あるそうですが?
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HPVはその遺伝子の塩基配列の相違から現在まで100種類以上が知られています。皮膚に感染するもの(皮膚型)と、性器・粘膜に感染するもの(粘膜・性器型)に大別されますが、性殖器関連のHPVは粘膜・性器型に属し、40種類前後が存在するといわれています。これらのHPVをがんとの関連の深さを基に分類したものが、ハイリスクHPVとローリスクHPVの分類法です。
良性腫瘍である尖圭コンジローマから分離されたHPV16やHPV18がローリスク・タイプに、また子宮頸がん材料から分離されたHPV16やHPV18ががんに関連が深いハイリスク・タイプとして、Lorinczらが初めてリスク・グループ分類して以来、いくつかの分類が試みられてきました。
わかりやすくいうと、ローリスクHPVは良性腫瘍の尖圭コンジローマや子宮頸部軽度異形成程度までは検出されますが、高度異形成や子宮頸がんではほとんど検出されないタイプで、ハイリスクHPVは高度異形成や子宮がんまでも検出されるタイプといえます。しかしながら、ハイリスクHPVが感染していることとがんに進展することは同じではなく、必要条件ではあるが、十分条件ではないと考えられています。したがって、ハイリスクHPVが検出された場合でも過度に心配することはありません。
- 18. HPV感染の自然史を教えてください。
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HPV感染は原則的にHPV感染者との性交渉により感染するsexually transmitted infection(STI)です。コンドームの使用は、感染予防にある程度有効ですが、手指を介しても感染するので注意が必要です。
HPVの感染率は報告によってさまざまですが、10~30%程度といわれてきました。最近、アメリカで検討された研究では14~59歳の26.8%、20~24歳では44.8%で感染が確認されました。わが国の研究でも10~15%といわれています。
1990年代後半よりHPVをPCR法で検出する方法でコホート研究が行われましたが、HPV陰性の女子大学生を追跡し3年間でHPV陽性化したものは60~75%にのぼり、しかもハイリスクHPVの陽性化率はローリスクHPVに比べて高いことがわかりました。これらのことから、HPV感染は非常にありふれたものであることがわかります。
このHPV感染はコンジローマや異形成などの疾患を発生する前に高頻度に消失することもわかりました。宿主本人のウイルス免疫により完全に消失しているのか、基底細胞内で休眠してPCR検査でも検出されなくなっただけなのかは議論が分かれますが、子宮頸部異形成や子宮頸がんの組織からは高頻度に、特にハイリスクHPVが検出されることから、CIN3やそれ以上に進展した症例ではハイリスクHPVが持続的に感染していること(持続感染)が進展の主因と考えられます(下図)。
- 19. HPV感染と子宮頸がんの自然史を教えてください。
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いくつかの研究を総合するとHPV感染が12ヵ月後まで存続する症例は半数以下であろうと考えられます。ハイリスクHPVではローリスクHPVよりも存続しやすい傾向がみられます。わが国のデータでも同様の結果が示されており、HPV16、18、31、33、51、52、58が陽性の症例では有意に存続しやすかったという結果が出ています。
HPV感染と子宮頸がんの関係について考えてみると、われわれが日常診療で遭遇するkoilocytosisを始めとするHPV感染所見を有する症例やCIN、子宮頸がん症例のほとんどでHPVが感染している一方で、細胞診がclass I/ⅡのなかにもPCRなどでHPV検査を行うと少なからず陽性が認められます。このことも考えあわせると、性交渉を開始する10歳代~20歳代前半にかけてをピークとして感染したHPVは、多くが不顕性感染のまま宿主の免疫によって排除され、一部の症例のみが細胞診や組織診で所見を呈する子宮頸部異形成となります。CIN1/2症例では、経過観察するだけで半数以上は2年以内に細胞診だけでなくHPVも陰性化します。
“消失せずに存続したもの”のなかで、次に“存続したままかCIN3に進展するか”という第2段階の選抜によって進展しがん化へ進むものが出てきます(下図)。
このような2段階の進展機転のなかで、ローリスクHPVでは軽度異形成を超えて進展するものは少なく、ほとんどは消失するか存続しても進展しないと考えられます。一方、ハイリスクHPVが感染した症例では半数以上は消失するものの、感染が持続するに従って一部の症例が高度異形成や子宮頸がんへ進行するわけです。このようにハイリスクHPV感染は大部分の子宮頸がんの症例での必要条件になっていますが、十分条件ではなく、がん化には何らかの発がん因子の関与があるものと考えられます。
子宮頸がんの発症年齢が他のがんに比べて若年であることは、ハイリスクHPV感染の持続によってウイルスのE6、E7遺伝子産物が生体内のがん抑制遺伝子Rbやp53などの遺伝子産物に対して抑制的に働くため、感染が持続しているだけで突然変異を起こすことと同等のがん化のプロセスとなり、引き続いて起こる何らかのがん化シグナルで容易にがん化してしまう(ウイルス発がん)ことになります。

- 20. HPV感染に関運する子宮頸がんの危険因子は何ですか?
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ハイリスクHPV感染は子宮頸がんの危険因子として非常に重要であるといえます。これまで、多くの研究で子宮頸がんの危険因子が指摘されており、sex partner数、喫煙、経ロ避妊薬服用、他の性感染症、慢性炎症状態、免疫抑制状態(HIV感染含む)、経産回数、年齢などがあげられています。このほか、食生活(ビタミン類の摂取状況)、組織適合抗原(HLA)型なども報告されています。これらの因子はHPV感染を助長するようなsexualactivityの指標であったり、宿主の免疫状態を反映する因子であったりしますが、お互いに複雑に関係しているため、おのおのの研究の切り口によって少し結果が異なる場合があります。
HPV感染と子宮頸がんへの進展の、二段階のステップに分けて危険因子を分類してみます。まず、第一にHPV感染が持続することに関係する危険因子は、ハイリスクHPV16、31、33、51、52、58でした。また、喫煙歴あり、sex partner 4人以上、既婚者、クラミジア抗体陽性も危険因子でした。しかし、20歳代の若年者では有意に消失しやすい結果を得ました。次に、CIN3に進展する危険因子を調べると、ハイリスクHPV感染、中でもHPV16、31、33、52、58が危険因子でした。一方、HLA1302がCINへの進展を抑制する因子である可能性が示唆されました。
以上をまとめてみますと、子宮頸がんはハイリスクHPVの持続感染を主因としたウイルス発がんであるといえます。HPV感染だけではなく、それ以外の共役因子の影響を受けてがん化しますが、その危険因子はHPV感染患者の後天的な背景因子と遺伝的素因に分けられます。後天的因子は主にHPV感染の持続に関連する要因でsexual activity関連因子(sex partner数、妊娠歴、経口避妊薬服用、婚姻状況、他のSTD:性行為感染など)と、免疫状態などに関係すると思われる因子(喫煙状況、HIV感染を含む免疫不全や免疫抑制状態、炎症の有無、免疫を賦活化するビタミン等の摂取状況など)に大別できます。これに対して、遺伝的要因としてあげられるのが、HLA型です。HLA分子は腫瘍やHPVのタンパク質を構成する特定のペプチドと結合し、その複合体が宿主のTリンパ球に認識されて免疫反応が惹起されます。この際、HLAの型によりHPV特異的な抗原認識能に差違が生じてがん化リスクの違いとなっている可能性があるかも知れません。今後の研究の進展が期待される分野です。
- 21. ASC-USやASC-Hが認められた場合、HPV検査やコルボ診を施行するべきでしょうか?
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アメリカ合衆国のASCCP 2006年ガイドラインならびに新医会分類では、ASC-USと判定された場合には、ハイプリッドキャプチャーⅡ(HC Ⅱ)を用いてハイリスクHPVの有無索するよう推奨されています。さらに、HC Ⅱ陽性であればコルポ診と生検が奨められます。一方、HC Ⅱ陰性であれば、通常の検診サイクルに戻り、年1回の検診が推奨されています。HPVテストを施行しない場合には、半年以内に細胞診による再検査が奨められています。もし、再検査で異常がみつかれば、コルポ診、生検に誘導されます。ASC-Hの場合には、HPVテストをせず、直ぐコルポ診と生検など精密検査が推奨されています。
日本では、HC Ⅱを含むHPV-DNAテストの保険適用は未承認ですので、現時点では医療保険下での検査実施は不可能です。
- 22. 細胞診でHPV感染が疑われた時、どの程度の頻度でがんに進展するか、予測できるでしょうか?
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がんへの進展の危険性は、細胞診で認められるHPV感染所見の有無からでは判断できません。
その危険性は、HPV検査によるハイリスクHPVが持続感染しているかどうかの判定に基づいて判断することが可能となってきました。Kj aerらは、デンマークのデータバンクを用いた研究で、ハイプリッドキャプチャーⅡ(HC Ⅱ)検査で1度でも陽性と判定された若年女性が10年以内にCIN3以上を発症する危険度は13.6%、中年女性では21.2%以上と推定しています。二度陽性であった中年女性でも20%以上と報告しています。また、Khanらは、ハイリスクHPVの中でも16型や18型のCIN3以上の発症率は他のハイリスクHPVに比べて極めて高く、10年後にはそれぞれ20%、17%だったと報告しています。
ハイリスクHPV感染を細胞診で鑑別できるかどうかは今後の課題ですが、atypical parakeratosisが鑑別できる可能性のある所見として注目されています。
- 23. 細胞診や組織診が正常で、ハイリスクHPV陽性であった場合、患者への説明はどのようにすればよいのでしょうか?その治療法や予防法はありますか?
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ハイリスクHPV感染のみでは治療の対象になりません。HPV感染の予防法としては、コンドームの常時使用とHPV予防ワクチンがあります。コンドームに関しては、適切かつ常時使用した場合に予防効果が認められていますが、HPV感染は若者に広くみられるので、現実には完全防御は難しいと考えられます。
HPV6、11、16、18型に対する感染予防ワクチンが最近開発され、世界中で使用されつつあります。性交渉開始前の若い女性に接種することによって、日本でも子宮頸がんの発生を半減できると考えられています。
しかし、このワクチンは感染子防ワクチンであり、すでに感染している人やCIN患者には無効と考えられています。CINに対する治療の是非について、アメリカでは2年以上続くCIN1や21歳以上の女性のCIN2以上が治療対象となっています。しかし日本ではCIN1、CIN2は原則的に経過観察、CIN3以上が治療の対象になっています。
- 24. 細胞診で軽度や中等度異形成で、ハイリスクHPV感染が認められた症例と認められない症例では取り扱いはどのようにしますか?
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現時点では、HPV感染の有無やHPVタイプにかかわらず、組織の病理診断に基づいて取り扱いを決定します。
ハイリスクHPV陰性の異形成は10年以内の進行はほとんどないが、陽性のものは進行しやすいと報告されています。特にHPV16、18型陽性例は進行しやすいという報告があります。ハイリスクHPV感染の持続化は発がんのリスク因子であり、HC Ⅱ検査が2年の間隔をあけて2度検査して続けて陽性であった場合には、進行しやすいという報告があります。しかし、HC Ⅱ検査の場合は連続で陽性であっても同じHPVの持続感染かどうか判定できません。信頼できるHPV genotyping検査法が開発されれば、持続感染化を証明するために用いられるようになると思われます。また、混合型HPV感染は予後不良という報告があります。将来はHPVタイプや感染パターンによって管理法を変えることになるかもしれません。
- 25. ローリスクHPVが陽性であった場合、どのような取り扱いをしますか?
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現在のHC Ⅱ法ではローリスクHPVは通常検出できません。ローリスクHPV感染は発がんに関係がないため、それを検出する臨床的意義はありません。たとえ検出されても、それだけでは治療の対象にはなりません。
- 26. 細胞診異常症例にHPVテストを行う意義はありますか?
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アメリカでは、細胞診でASC-USの場合のみHPVテストを行い、ASC-H、LSIL以上の異常の場合はHPVテストを行いません。ASC-USでは、HPV感染の有無を調べ細胞形態の変化の意味づけをし、精査対象とするかの判断ができます。しかし、HPVタイプ判定法については、現在、どの細胞異常例にも臨床使用が認可されたものはありません。今後、信頼できるHPVタイプ判定法が認可されれば、CIN1やCIN2の患者に対して、治療するかどうかの判断材料としてHPVタイプ判定を行うようになる可能性はあります。欧米先進国で子宮頸部腺がんの罹患率、死亡率は増加しており、最も重要な危険因子はハイリスクHPV感染です。
子宮頸管腺細胞の異常に対して高感度なHPV-PCR検査を行ったところ、上皮内腺がん(AIS)の100%、腺がんの94%にHPVが陽性でした。別の報告で、細胞診で検出された腺異型(atypical glandular cells:AGC)症例を精密検査したところ、実際に組織異常が確認された症例の77%がCINや扁平上皮がんなどの扁平上皮異常であり、残り23%がAISや頸部腺がんでした。この報告ではHPVテストにはHC Ⅱ法を用いており、最終的にHSILが証明された症例の77%、AISの64%にハイリスクHPVが陽性でした。
- 27. 子宮頸がんの二次検診で、HPVテストとコルポ診を併用する意義はありますか?
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米国では細胞診でASC-USの場合にはHPVテスト、ASC-H、LSILの場合にはコルポ診が二次検診として推奨されています。また、HSILの場合にはコルポ診と頸管組織検査、または、円錐切除が勧められています。したがって、米国ではASC-H、LSIL、HSILと診断された症例の二次検査としてHPVテストを実施しません。なぜなら、ASC-Hの場合には単なる反応性変化か高度CINかの鑑別が、LSILの場合には高度のCINやがんが存在しないかどうかの診断が重要であるため、HPVテストは不適切です。
一次検診を細胞診で行った場合の二次検診にHPVテストをする意義はASC-USの場合のみ認められています。しかし、これはコルポ診の費用が高いアメリカの話です。ASC-USの約7割がHPV陽性であり、その一部から前がん病変やがんが発見されています。ASC-US症例からがんが発見される頻度は、LSIL症例と同程度という報告もあります。現在、日本ではHPVテストが保険で認められていないこともあり、日本でベセスダンステムを導入した場合、ASC-US症例に対して直接コルポ診を行うoptionもあるかもしれません。しかし、ASC-USは検診受診者の最高5%に検出されるとされているため、すべてのASC-USにコルポ診を行うことは実際には難しいと思われます。ベセスダンステムを導入するならば、やはりHPVテストの保険認定が必要になってくるのではないかと思われます。HPVテストが認められるまで一次検診でASC-USの場合には細胞診による追跡、あるいはコルポ診という選択肢が考えられます。
- 28. HPVワクチンにはどのようなものがあり、どのようなメリットがありますか?
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世界中の子宮頸がん組織の99%以上でHPVが検出されますが、16型と18型は代表的なハイリスクHPVであり、約70%を占めると報告されています。HPVは細胞培養系で増殖しないため、遺伝子組み換え技術を用いて作製されたウイルス様粒子(virus-like particle、VLP)を用いたワクチンが開発されました。16型と18型をターゲットとした2価ワクチンと、性器コンジローマなどの原因となる6型と11型も含む4価ワクチンが臨床応用されています。
ワクチン接種により多量に産生された中和抗体が、子宮頸部へ侵入したHPVウイルス粒子と結合することにより、HPV16型、18型の持続感染と、関連した細胞異常、CIN2/3、AISの発生がほぼ100%防止できます。また、これらのワクチンは16型と関連のある31型、18型と関連のある45型などの感染予防にもある程度有効とされています(クロスプロテクション効果)。HPVワクチンが世界中に普及した場合、子宮頸がんの約70%が防止できると期待されています。初交前に接種することが望ましく、11~13歳での接種が推奨されています。2価ワクチン(16型VLP Ll 20μg、18型VLP LI 20μgを含有)0.5mL、または4価ワクチン(6型VLP L1 20μg、11型VLP Ll 40μg、16型VLP L140μg、18型VLP L1 20μgを含有)0.5mLを3回筋肉注射します(2価ワクチン:初回接種、1ヵ月後と6ヵ月後に再接種、4価ワクチン:初回接種、2ヵ月後と6ヵ月後に再接種)。ワクチン接種により、自然感染で得られる抗体価の数十倍の中和抗体が産生され、最低7年間維持されます。
7年を超えた長期的効果については現在研究中で、感染予防効果が何年くらい維持されるのか、終生免疫となるのかは不明です。ワクチンにはVLP L1蛋白だけが含まれるため、ウイルスとしての感染性はありません。疼痛、腫脹、発赤など局所刺激症状はしばしば認められますが、重篤な副作用はほとんどなく、安全なワクチンであると考えられています。妊娠中の安全性は確立しておらず、妊婦へのワクチン接種は避けるべきと思われます。HPVワクチンの接種は、HPVが主な原因と考えられている膣がん、外陰がん、肛門がん、若年性喉頭乳頭腫などの予防にも有効です。
- 29. HPVワクチン接種の対象者と方法について教えてください。
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アメリカでFDA(Food and Drug Administration)による最初のHPVワクチンの承認は、HPV4価ワクチン(Gardasn(F)、HPV6/11/16/18、Merck)について行われました。適用は上記4型のHPVに関連する疾患、子宮頸がん、膣がんおよび外陰がんとその前駆病変と性器ゆうぜいです。HPV16と18が世界全体の子宮頸がんの70%、HPV6と11が性器ゆうぜいの約90%の原因になるといわれています。このほかにHPV2価ワクチン(Cervarix、HPV16/18、グラクソ・スミスクライン)が開発され、EUなどで子宮頸がん、膣がんおよび外陰がんとその前駆病変に適応承認されています。子宮頸がん、膣がんおよび外陰がんとその前駆病変に対する2つのワクチンの臨床成績や効果、副作用に関して大きな差はみられず、ほぼ同等の有効性と評価されています。アメリカでの対象は9~26歳の女性です。しかし、ワクチン接種の最も推奨される年齢は11~12歳で、9歳から開始することもできるとされています。11~12歳でワクチン接種をしなかった13~26歳の女性にはcatch-up接種([対象年齢を過ぎた女性に対する]追いかけ接種)が勧められています。
11~12歳を推奨する理由は、費用対効果を考慮してのことです。まず、HPVが性行為を介して感染することから、この年齢では“sexual debut”前であること(アメリカ女性におけるsexual debut年齢調査に基づく)、この年齢においても接種が安全で抗体価の上昇も良好であったこと、最低5年以上の抗体価の維持が観察されていることなどが、その理由です。また、このワクチンはすでに感染している上記HPVに関しては、ウイルスを消失させる治療効果はありませんが、感染しているHPVが一度消失した後の再感染を防ぐことはできます。これが、13~26歳女性における“catch-up(追いかけ)”接種が推奨される理由です。
HPVワクチンの接種は6ヵ月間に3回行われます(2回目は初回接種1または2ヵ月後、3回目は6ヵ月後)。ワクチン接種後の抗体価の維持は、これまでのところ約7年の観察期間しかありませんので今後の推移を見守ることになりますが、現在までのところ抗体価が下がらずに維持されていますのでかなり長期間の効果が期待されています。HPV感染は性交渉を介するものがほとんどですが、sexual debutしているか、sexual acdvityが高いかは臨床医が判断できることではないので、HPVワクチンの接種に先駆けて子宮頸部細胞診、HPV-DNAテスト、HPV抗体価の測定などをする必要はありません。
なお、男性に対する接種は有効性のデータがまだ少ないことから、アメリカはじめ多くの国では承認されていませんが、オーストラリア、ニュージーランド、ペルー、メキシコなどでは承認されています。これらは、子宮頸がんの予防という目的以外に、男性におけるHPVを原因とする、肛門がん、陰茎がん、中咽頭がんおよびコンジローマなどの良性のHPV関連病変の予防を目的としています。
- 30. HPVワクチンにはどのような有害事象がありますか?
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FDA(アメリカ食品医薬品局)での審査時に提出された資料では、ワクチン接種後15日間以内の局所の副作用では、軽度・中等度の痛みが81%、重度の痛みは2.8%、軽度・中等度の腫れが23.3%、重度の腫れは2.0%、軽度・中等度の赤斑は23.7%、重度の赤斑は0.9%でした。全身の有害事象のうち、4.0~4.9%で38℃以上の発熱がみられました。全身の有害事象で重篤なものは接種者の0.1%未満でした(喘息、胃腸炎、頭痛・高血圧、性器出血、接種部位の疼痛など)。有害事象のなかで頻度が高かったのは、発熱(13.0%)、唾気(6.7%)、鼻咽頭炎(6.4%)、めまい(4.0%)、下痢(3.6%)、唾吐(2.1%)、筋肉痛(2.0%)、咳(2.0%)などで、プラセボ群と有意差はありませんでした。
一般にワクチン接種により迷走神経反応などによって失神を起こすことがありますが、その35%は10~18歳に起こると報告されています。したがって、HPVワクチン接種後15分間はよく観察すべきです。なお、HPV自体はDNAウイルスですが、HPVワクチンはウイルスの蛋白質Ll capsidをイースト菌(4価ワクチンGardasil)またはバキュロウイルス発現システム(2価ワクチンCervarix)に誘導して、ワクチンを産生していますので、感染の恐れはありません。妊婦へのHPVワクチン接種は勧められません。このワクチンと妊娠の転帰や胎児の発育障害との関連性は認められていませんが、安全性に関するデータが不足しているからです。自然流産は25.0%、新生児死亡は1.1%、先天奇形は1.5%で、いずれもプラセボ群と差がありませんでした。最初のワクチン接種後に妊娠が判明したときは、以降のワクチン接種は、分娩後にすべきとされています。もし、ワクチン接種後に妊娠が判明したとしても、人工妊娠中絶の必要はありません。なお、授乳中の女性はワクチンの接種が可能とされています。
- 31. HPVワクチンの接種を受ければ、子宮頸がん検診を受けなくていいのですか?
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HPVワクチンを接種しても子宮頸がん検診は必ず受けるべきです。ワクチンは検診の代わりにはなりません。WHOをはじめ、これまでにHPVワクチンが承認された国々の勧告では、子宮頸がん検診はこれまでどおり継続すべきであると強調されています。現行のHPVワクチンはウイルスの蛋白質Ll capsidをイースト菌またはパキュロウイルス発現システムに誘導して、ワクチンを産生していますので型特異性が高く(HPV16ワクチンはHPV16のみ感染予防)、原則として他の型には無効です。
現行のHPV2価ワクチンはHPV16ワクチンとHPV18ワクチン(4価ワクチンでは、さらにHPV6とHPV11)を併せたもので、世界中の子宮頸がんの70%を占めるHPV16またはHPV18には有効ですが、残りのHPV型を原因とする子宮頸がんには無効です。また、日本ではHPV52、58を原因とする子宮頸がんが比較的多く、HPV16またはHVP18が占める割合は50~60%と見積もられ、現行のHPVワクチンでは有効性が低くなる可能性があります。ただし、最近の報告では両社のワクチンともに、HPV16および18に系統学的に近い類縁HPV型に若干の有効性があることが報告されており期待されます。
また、現行のHPVワクチンは臨床試験が始まってから7年が経過し、その間有効な高い抗体価がなお、子宮体がんは子宮頸がんとは異なり、HPVは発生原因ではありませんので、HPVワクチンは無効です。
- 32. もし、女性全員にHPVワクチンを打てば、どのくらいの子宮頸がんや異形成の患者が滅ると考えられていますか?
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世界の子宮頸がん患者のうち、HPV16と18を原因とする割合はおよそ70%と見積もられています。日本ではその割合はやや低いといわれていますが、一方で若年者にはHPV16および18感染者が相対的に多く、海外と変わらないとの指摘もあります。仮に、日本でも子宮頸がんにおけるHPV16および18の検出率を約70%として、HPV感染から異形成および子宮頸がんへ進行する確率などを数学的モデルによって試算すると以下のような結果が得られました。
12歳女子全員にワクチンを接種してその集団全員が死亡するまでの数学的モデルを計算した場合、現行の子宮頸がん検診の受診率であるならば、子宮頸がんの発生率、死亡率はそれぞれ約73.1%、約73.2%抑えられることが推計されました。
ただし、これはsexual debut前の12歳女子を対象に予防接種を行った場合であって、すでにHPVに感染している女性には治療効果は期待できません。接種対象年齢の設定で予防効果は大きく変化し、30歳で51.7%、35歳では42.7%と低下します。
- 33. HPV16、18型ワクチン(サーバリックス)は、その他のタイプにも効果がありますか?
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現行のHPVワクチンは型特異性の高いL1カプシド(capsid)蛋白を用いて作られているため、当初他のタイプには効果がないと考えられていました。しかし、臨床試験が進みデータが蓄積すると、他の型に対する感染防御効果(クロスプロテクション)があることが明らかとなりました。これ、HPVウイルスの系統樹において近い関係にある型では、L1カプシド蛋白の相同性が高いからだと説明されています。
2価HPVワクチンを接種した場合の6ヵ月間の持続感染予防効果を観察した結果、プラセボ群に比較してHPV45は59.9%、HPV31は36.1%、HPV33は36.5%であったと報告されています。なお、HPV45はHPV18と近縁のA7に、HPV31とHPV33はHPV16と近縁のA9に属しています。また、16~26歳の女性に対して4価HPVワクチンを接種した場合の成績をみると、10種類のHPV(HPV31、33、35、39、45、51、52、56、58、59)によるCIN2/3またはAISの病変を38%減少させたと報告されています。この10種類は子宮頸がん全体の20%の原因になるHPVです。いずれにしても、現行のHPV16、18ワクチンは近縁のHPVタイプに関して若干の効果が期待できそうです。
- 34. 尖圭コンジローマの予防にも効果がありますか?
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尖圭コンジローマはそのほとんどが、ローリスクHPVに分類されるHPV6または11の感染によって生じます。尖圭コンジローマはがん化することはなく、自然消失することもある疾患です。
現行のHPVワクチンのうち、4価HPVワクチンには、子宮頸がんの原因であるHPV16および18以外に、HPV6および11に対するワクチンも含まれています。
16~24歳の女性2261人を対象としたプラセボ(2,279人)対照2重盲検比較試験では、CINや子宮頸がんの発生以外に、尖圭コンジローマ、VIN/ValNl-3、膣がん、外陰がんの発生を主要評価項目として検討されました。ワクチン群からは上記の疾患は1例も発生せず、プラセボ群からは60例が発生し、ワクチンの有効率は100%でした。すなわち、HPV4価ワクチンで尖圭コンジローマの発生をほぼ完全に予防できることが期待されます。
- 35. HPVワクチンは、すでにHPVに感染している人でも効果がありますか?
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HPVワクチン接種により液性免疫が働き、多量に産生された中和抗体により、HPVウイルス粒子が子宮頸部粘膜上皮細胞に感染するのを防止します。そのため予防効果は得られますが治療効果は得られず、HPV持続感染の治療、HPVに起因する子宮頸部異形成、子宮頸がんなどの治療には用いられません。
すでにHPVに感染している人でも、HPVワクチンのターゲットとなる6型、11型、16型、18型すべてに感染していることはほとんどありません。
したがって、ワクチン接種により、これまでに感染していない型の将来の感染を防止することは可能です。また、クロスブロテクション効果により、子宮頸がん発生の10%に関与する31型、45型などの感染が防止される可能性も考えられます。
- 36. HPVワクチンは、子宮頸がんや異形成の患者にも効果がありますか?
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現在のHPVワクチンはいずれも感染予防ワクチンであり、治療ワクチンではありません。したがって、当該の子宮頸がんおよび異形成には治療効果は期待できません。また、HPV感染の治療もできません。しかし、現在の病変がHPV16または18以外によるものであれば、HPV16、18が原因となる将来の病変発生の予防効果は期待できます。治療ワクチンも開発中ですが、いまのところまだ臨床応用されていません。
- 37. まだ若いから、検診を受けなくても大丈夫ですか?
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子宮頸がんは比較的若い女性に多くみられ、特に20~30代の女性に急増しています。子宮頸がんは、若い女性の妊娠や出産の可能性を脅かし、尊い命を奪うがんなのです。若いときからきちんと検診を受けましょう。
医師用
- 1. 細胞診ベセスダンステムでは、HPV感染所見はどのように取り扱われているのでしょうか?
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ベセスダンステムの大きな特徴の1つはHPV感染が子宮頸がんの原因であるとの概念から出発していることです。HPV感染をとらえることにより、少しでも見逃しを滅らそうという工夫がなされているのです。これまでの日母分類では、HPV感染と子宮頸がんとの因果関係が明らかにされる以前に設定されたものですので、このことに配慮されていません。
ベセスダンステム2001アトラスによると、細胞診で確実な“HPV感染を伴った扁平上皮細胞変化”を呈する場合は、LSILと判定され、いわゆる軽度異形成やCIN1を包含しています。ちなみに、LSILの細胞診断基準は次のとおりです。
- 孤立性あるいはシート状に出現する
- 細胞変化は成熟あるいは表層型の豊富な細胞質に限局する
- 細胞は大型
- 中層型細胞核の3倍以上の核腫大
- 種々なクロマチン過多
- 2核や多核細胞が頻繁
- クロマチンは均一だが、粗大顆粒状で、不透明な泥状(smudged or densely opaque)を呈することもある
- 核小体は通常欠いている
- 核縁はしばしば不規則だが、平滑のこともある
- 細胞質縁は明瞭
- 鋭敏な境界を有する淡明な核周囲領域と濃染された細胞質辺縁からなる“核周囲空洞形成(perinuclear cavitation)”いわゆるkoilocytosisは特徴的所見だが、LSILの診断の必須条件ではない。一方、細胞質は濃いオレンジ好染性(角化)を示すこともある
- 核周囲空洞形成あるいは濃いオレンジ好染性細胞に核異常を有すると、LSILと診断される。
LSIL例。図左:核周囲明庭(空洞形成)。核の腫大、濃染などの異型を伴う。図右:異常小型角化(錯角化)細胞。細胞は小型で、しばしば細胞質の輝度が高い。核は濃縮状で、大小不同、核形不整がみられる。(細胞検査士会ベセスダ小委員会提供)
一方、「LSILの判断は、過剰判断や非特異的形態変化をもつ女性が不必要な治療を受けることのないよう、厳しいクライテリアに基づいて、なされるべきである」とベセスダンステムでは規定しています。たとえば、核異型所見を伴わない細胞質核周囲明庭(いわゆるkoilocytosis)はLSILとみなすべきではありません。
“koilocytosis”、“koilocytotic atypia”や“condylomatous atypia”という用語はベセスダ用語には含まれていません。いわゆるkonocyotosisと軽度異形成(CIN1)を鑑別する形態基準が研究者間でさまざまであるためです。しかし、核異常の明瞭な“いわゆるatypicalparakeratosis”はSILとして分類されます。明確にSILと判断するに満たない境界的な変化をもつ所見はatypical squamous cens of undetermined signi丘cance(ASC-US)に分類されています。
- 2. ベセスダンステムでASC(ASC-US、ASC-H)、LSIL、HSILとカテゴリー分類される根拠を教えてください。
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ベセスダンステム2001では、扁平上皮内病変を軽度(LSIL)と高度(HSIL)の2段階に分類し、nSILにCIN2からCIN3が包含されると定義されています。これは、「従来の3段階あるいは4段階の分類システムでは、観察者間あるいは同一の観察者内での再現性が低い」ことに基づいて、2つのカテゴリーに集約されたのです。確かに、2段階分類は、3段階のCIN分類や4段階の異形成・上皮内がん分類よりも臨床医へもたらす情報が少ないといえます。しかし、CIN2とCIN3を細胞診で分別するのは再現性が低く、一括してHSILという1つのカテゴリーにすることで再現性が向上することが、ASC-US LSIL Triage Study(ALTS)で明示されています。
2段階分類するもう1つの理由は、以下のとおりです。治療しないで経過観察した場合のCIN2の自然史は、CIN3よりもCIN1により近いので、軽度前駆病変と高度前駆病変の境界線は、CIN2とCIN3の間におくべきだとする意見があります。いくつかのヨーロッパ諸国ではCIN1とCIN2は治療目的では一緒に分類されています。わが国でも同様でしょう。しかし、スクリーニング法としての頸部細胞診は感度を重要視しなければなりません。そのため、軽度病変と高度病変の細胞学的な境界をCIN1とCIN2の間におくことが適切と考えられたのです。
- 3. ベセスダンステムは世界で普及しつつありますが、わが国での取り組みの現状を教えてください。
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長年、わが国で子宮頸部細胞診結果の分類に用いられてきた日母分類は、パパニコロウのクラス分類に基づくもので、最近はその限界が種々指摘されていました。2006年には日母(日母は、「日本産婦人科医会」と名称変更されています)のがん対策委員会自身が、クラス分類を改訂することを目指して、改訂作業に入りました。その結果、「日本産婦人科医会」がん対策委員会は2007年10月に旧日母分類のクラス分類を廃し、ベセスダンステム2001に準拠した「医会分類」を承認、決定するに至ったのです。同医会では、2009年度(2009年4月)から、全国市町村で実施されている行政検診の報告様式をベセスダンステム2001に準拠したものにするように働きかけています。また、同医会では、「ベセスダンステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式の理解のために」を会員に配布し、本「医会分類」の啓発と普及に努めています。子宮頸部細胞診報告は今後徐々に、従来のクラス分類からベセスダンステム2001準拠「医会分類」による報告へと移行が進むと思われます。
- 4. ASC-USとASC-Hの細胞所見の定義は何でしょうか?
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ベセスダンステム2001における定義では、ASCの判定には、細胞が以下の3つの所見を示すことが必須とされています。すなわち、
- 扁平上皮への分化
- N/C比の増加
- わずかな核濃染、クロマチンの凝集、形状不整、スマッジ(smudged)核、多核
です。特に、わずかな核異常は、ASCの判定に必要条件です。これに加えて、濃厚なオレンジ好性(錯角化、パラケラトーンス、parakeratosis)や核周囲の明庭(コイロサイトーンス、koilocytosis)のようなHPV感染にしばしばみられる細胞質の変化は、ASCないしSILを疑う際に参考にはなりますが、必要条件とはいえません。
ASC-USの細胞像として、
- 中層細胞核の21/2~3倍の核面積
- N/C比軽度上昇
- 最低限の核クロマチン増加・分布不整や核形不整
- 核異常が最少の“いわゆるatypical parakeratosis”
があげられています。また、ASC-USは、「LSILかSIL of intemlediate gradeのどちらかを疑うがクライテリアを完全には満たさない」と定義されています。
ASC-US例。図左右:扁平上皮化生由来の異型細胞。核の腫大を示すがクロマチンは微細で核形不整が少い点などSILと判断するには所見が弱い。(細胞検査士会ベセスダ小委員会提供)
ASC-US例。図左:koilocytosisを思わす細胞。2核細胞はLSILとの鑑別が難しいが出現細胞が極めて少ない。図右:異常小型角化(錯角化)細胞。小型の多辺形・角化を伴う細胞質を有する。核は小型濃縮状で、SILと判断するには核異型が弱い。(細胞検査士会ベセスダ小委員会提供)
ASC-Hでは、
- N/C比の高い小細胞・異型(未熟)化生:lih~21/2倍の大きい核を有する化生細胞、N/C比がHSIL相当などHSIL類似の所見
- 密集したシート状配列:極性を失った核や視認困難な核を有する密集細胞群、また濃厚な細胞質、多形の細胞形態や腺系よりは扁平上皮類似の鋭利な辺縁を有する細胞集塊片
と定義されています。
なお、このASCのカテゴリーは個々の細胞に適用するのではなく、検体全体の判定のためのものとして設定されています。あいまいで主観的な所見を内包したこの概念は、明確な基準作成の困難さとあいまって、結果としては再現性の低さをまねいてもいます。ASCには変性や人工的変化を含む無数の所見が包含されており、細胞診上ではこれらの変化のごく一部を確認しているに過ぎないのでしょう。
ASC-H例。図左:集塊状に出現した核異型を伴う扁平上皮化生細胞。核の腫大、核形不整を示すが、クロマチンが微細で小型の核小体がみえる点がHSILと判断するには躊躇する。図右:核異型を伴う予備細胞集塊。小型の上皮内癌との鑑別を要する。クロマチンは微細で均等分布し、細胞のほつれが少ない点が上皮内癌の集塊と異なる所見である。(細胞検査士会ベセスダ小委員会提供)
- 5. 細胞診でのHPV感染所見として、koilocylosis以外にどのようなものがあるでしょうか?
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一般にいわれているHPV感染細胞像は、小型ながら濃縮核を有する小型の扁平上皮細胞で、オレンジG好染性のparakeratocyte、表層や中層型の扁平上皮に認められる核周囲の細胞質が広く抜け、濃染した細胞質縁をもつkoilocyte、クロマチンが濃染し無構造な変性(smudged)核、長径150μm以上の大型細胞、多核細胞などがあげられます。しかし、これらの所見がHPVに特異的かどうかに考慮しておくことが肝腎です。
- 6. HPV感染と見間違う細胞所見は?
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HPV感染所見はHPVに特異な所見でない可能性があります。ベセスダンステムでは、HPV感染所見としてkoilocyteの存在を重視していますが、核異型を多少は伴うものに限定しています。koilocyteは炎症による核周囲ハロー(halo)と鑑別が必要で、核周囲ハローを有する深層型細胞はkoilocyteとはいえません。また、核異型を伴わないハローは単なる反応性変化だったり、黄色調のハロー像はグリコーゲンの貯留によることがあります。核異型が明瞭でないコイロサイトの場合は、ASC-USの範摩です。parakeratosisは重要なHPV感染所見ですが、核腫大しオレンジG好染性の大型細胞(dyskeratocyteとも呼ばれる)は非特異的なことが多いでようです。smudged核や大型細胞の出現頻度は少ないですが、特異性は高いといわれています。一方、多核細胞は非特異的炎症などにも出現し、特異性が低い所見でしょう。
図左:koilocytosisを思わす細胞。しかし核に異型が乏しい。図右:小型角化(錯角化)細胞。小型の多辺形・角化を伴う細胞質を有する。角は小型濃縮状であるが異型に乏しい。(左図:笹川寿之委員、右図:細胞検査士会ベセスダ小委員会提供)
- 7. 細胞診でHPV感染が疑われた時、どのように対応すべきでしょうか?
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この質問の根底には、子宮頸がんの発生はHPV感染によるものと、HPV感染によらないものがあるという考え方があると思います。
さて、子宮頸部細胞診におけるHPV感染所見とは具体的に何を指すのでしょうか?高度扁平上皮内病変(HSIL)症例の1~2年前の細胞診を検討した研究では、その45%に軽度扁平上皮内病変(LSIL)の所見(koilocytosisや軽度異形成)、残りのほとんどの症例に2核または多核細胞、上皮集魂(epithelial plaques)、真珠形成、角化充進、異常角化、錯角化などHPV感染を疑う細胞所見がみられたと報告されています。HSIL発症の2年前には90%、1年前には96%に細胞異常や上記のHPV感染に関連する変化がみられたと報告されています。
これらのHPV感染関連所見の多くはHSILの診断に特異的ではないけれども、高度上皮内病変の共存や将来の発生を予測するうえで注目に値するとされています。HPV感染では、巨細胞、泥状(しみ)濃染(smudged)核、奇怪核などの出現も報告されていますが、これらの出現頻度は少ないです。HPV-DNAテスト陽性例を調査したところ、角化異常、多核細胞、未熟化生細胞などの所見がみられる頻度は高く、境界明瞭で核異型を伴った核周囲明庭像、いわゆるkoilocytosisはHPV陽性例の2割ほどにしかみられません。しかし、koilocytosisがみられた場合にHPVが陽性である頻度は95%ですが、多核細胞、異常角化、錯角化、未熟化生細胞など、それぞれの所見がみられた場合にHPV感染が陽性である率はせいぜい7割程度です。koilocytosis以外のいわゆるcytoplasmic haloは、ローリスクHPVや非特異的変化であると考えられます。ベセスダンステムや医会分類ではkoilocytosisや中表層細胞に軽度異型があればLSIL(CIN1疑い)と診断しますが、そのような所見は明らかではないがHPV感染関連所見をみる場合にどう取り扱うのかは重要な問題です。異型がLSILの条件に満たない場合はASC-USとし、HSILとするほどでない軽度異常を伴う傍基底細胞や未熟化生細胞がみられればASC-Hと診断します。ベセスダンステムでのASC-US、ASC-Hの患者の7割ぐらいにハイリスクHPVが検出され、その10~20%から中・高度異形成、0.1%からがんが発見されると報告されています。
異常細胞を見逃さないための手段として、HPV感染関連所見に注意することは重要ですが、最終判断は個々の細胞の異型度でなされるのが基本です。したがって、HPV感染所見にとらわれ過ぎて過剰診断しないよう注意してください。特に異型のないハロー(halo)をkoilocytosisと診断しないでください。
- 8. 細胞診でHPV感染が疑われるが異形成細胞が認められない場合の指示(recommendation)は?
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koilocytosisや異型のある中表層系の細胞(いわゆるatypical parakeratosisやdyskeratosisなど)があれば軽度異形成(LSIL)と診断します。 HPV感染が疑われるという根拠がこれら以外のHPV感染関連所見のみである場合には、あえてHPV感染についてコメントしたり、何か指示したりする意義は少ないかもしれません。どうしても正常と判断できない場合はASC-USやASC-nと診断してください。その基準の設定には細胞検査士と細胞診専門医との協議が必要でしょう。
- 9. HPVテストを子宮頸がん検診に用いている国がありますか?
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国としてHPVテストをいち早く導入したのはアメリカです。アメリカで子宮頸がん検診における頸部細胞診の精度が低いことが社会問題化し、政府主導でこの問題解決に当たり1988年にベセスダンステムが作成されたことが転機となりました。子宮頸がんとHPVの関連を重視して、ベセスダンステムでの細胞診断だけでは判定の難しいASC-USに対して、HPVテストの実施がFDA(アメリカ食品医薬品局)で承認されたことが始まりです。
HPVの自然史が解明されてくると、FDAは30歳以上の女性に対して子宮頸部細胞診とHPVテストを併用することを承認し、これに呼応してアメリカ産婦人科学会(ACOG)でも子宮頸がん検診のガイドラインに組み込まれて現在に至っています。
アメリカではHPVテストにはHc nが用いられています。これは子宮頸がんハイリスクHPVである13種類の感染の有無をチェックする検査法で、ハイリスクHPVの型判定はできませんが、ハイリスクHPVが感染しているかどうかが調べられます。型判定に比べて安価でスクリーニング検査に適しているといえます。
- 10. HPVテストを子宮頸がんの一次検診として利用した場合の意義について教えてください。
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アメリカでは「積極的にHPVテストを子宮頸がん検診に取り入れてい亡率を減少できる(can reduce)十分な根拠がある」と声明を発表しています。このようにHPVテストを子宮頸がんの一次検診として利用することは、有意義である可能性があります。しかしながら、WHOが同様に明言しているように「細胞診を用いた子宮頸がん検診が子宮頸がんの罹患率と死亡率をこれまでに減少させた」実績(has reduced)は、紛れもない事実です。それに対して、HPVテストによる罹患率・死亡率減少効果が細胞診従来法より優れているか否か、現時点では、直接検証されていないことに注意をはらう必要があります。したがって、一次検診でHPVテストが従来法の細胞診検査を駆逐するほど優位性があるということではありません。なお、2009年4月にインドからHPVテストが有意に子宮頸がん患者の死亡率を低下させたと報告されました。注目に値しますが、国情に合せた検証が必要と思われます。
ここでいう一次検診はスクリーニング検査といわれるものです。スクリーニング検査として行う場合の検討項目について確認してみます。スクリーニング検査では、実際の疾病の有無と検査の陽性・陰性に誤差が生じます。国内外で子宮頸部細胞診とHPVテストを同時に行い、そのスクリーニング検査としての正確性を比較検討する研究が行われています。われわれ細胞診の臨床業務に携わっている者として残念ではありますが、細胞診検至2のCIN2以上の検出感度は34~94%であるのに対して、HPVテストのそれは85~98%であり、いずれの研究でもHPVテストが高感度でした。一方、特異度に関しては細胞診検査で78~99%であるのに対して、HPVテストでは82~97%で多くの国では細胞診のほうが優れていました。この結果からいえることは、細胞診検査では常に細胞採取者、検体作製者、細胞診診断者のおのおのについて再現性や信頼性の点で感度が低くなるのに対して、HPVテストは単に機械的な陽性・陰性の判定であるため再現性が良好で高感度ですが、そのために偽陽性の頻度が高くなるということです。一例として、2007年に発表されたカナダのMayran(:2の論文6)をみてみましょう。ここでは細胞診とHPVテストのスクリーニング効率の比較を行うだけではなく、単独もしくは併用による要精検率のシミュレーションを行っています。ベセスダンステムでLSIL以上を1とした場合、感度を上昇させるために細胞診をASC-US以上にした場合は要精検数が2.9倍であるのに対して、HPVテスト(HC Ⅱ)の導入ではそれが6.1倍に跳ね上がるというわけです。これは高確率でCIN2以上の病変を発見できる代償として、精検に回る症例が6倍に増加することになるわけですから、偽陽性症例が増加することを意味します。これは精密検査に要する医療費の増大をまねくことになります。
以上をまとめると、子宮頸部細胞診を一次検診としている現状に比べて、HPVテストでは病変発見数は増加するものの、発見するためのコスト(要精検率)が増加するということになり、費用対効果が優れているとは一概にいえません。
- 11. 子宮頸がんの一次検診として、HPVテストと細胞診のどちらが優れていますか?
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単純にスクリーニングとして子宮頸部病変の検出のみを考えればHPVテストのほうが優れていますが、ここでは子宮頸がん検診におけるスクリーニング検査の位置づけから考えてみます。
子宮頸がん検診の目的は「子宮頸がん検診を行うことで、子宮頸がんによる死亡率が減少すること」です。したがって、この目的に則して考えると1回の検診で子宮頸部病変が発見されなくても治癒可能な時点までに発見されれば、その子宮頸がん検診は容認されることになります。また、検診に投入される費用や、要精検者への精密検診の医療費からみた費用対効果が問題となります。その点では細胞診を一次検診とする現在の検診システムは、HPVテストに比べて検診費用が安価なため複数回の細胞診検査で初期浸潤がんまでを発見することはおおむね可能ですから、HPVテストが子宮頸がん検診の一次検診で勝っていると結論づけできません。
しかしながら、われわれは現在の子宮頸がん検診のシステムが最良なものでないこともわかっています。現に2000年を過ぎてわが国の子宮頸がんによる死亡数は若年者を主体として増加傾向にあります。また、わが国では30%以下と検診受診率が低いのが問題です。HPVテストを導入すると、ハイリスクHPVに感染しているか否かを1回の検査で確実に選別できるという利点があります。そのため、これを検診に導入することで非感染者の検診間隔を延長できる可能性があります。余剰分の財源や人員を新規受診者開拓に振り向けるなど、わが国の検診自体の打開策に結びつく可能性が出てきます。つまり、子宮頸がん検診のシステムを改善するためには、両者は優劣を競うものではなく、形態学的検査の側面をもつ細胞診検査と生化学的検査の側面をもつHPVテストを併用して、お互いの長所を生かした一次スクリーニングが現在模索されているのです。最新の細胞診とHPVテストに関するコホート研究では、HPVテスト陽性者のみに細胞診検査を行うことや、細胞診検査とHPVのタイピング検査を同時に施行して、その結果で精密検査を行う症例を効率的に絞ることにより、細胞診単独の場合より高いCIN発見率が得られると報告されています。費用対効果に重点がおかれるがん検診事業では、本来費用負担が増加することは歓迎されません。
- 12. HPVテストを子宮頸がんの一次検診として用いた場合、陽性者の取り扱いはどのようになりますか?
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35歳以上の女性に対する細胞診でASC-US以上を異常とした場合に、CIN2以上の病変を検出できる感度は55%、またCIN3以上のそれでは53%で、最もよい成績地城でもそれぞれ77%、76%でした。一方、HPVテストの感度はCIN2以上またはCIN3以上の病変の検出感度は、共に96%でした。このように、HPVテストが細胞診よりはるかに高感度であるとするならば、両者併用するよりもHPVテストでスクリーニングした後に細胞診嚢を追加する方式のほうが効率よいのではないかという考え方が出てきました。子宮頸がん検診に液状処理細胞診を行っている施設では、この方法が簡単に実施できます。すなわち、すべての被検者に液状細胞診検体を採取し、まずHPVテストを全例に行います。そして、HPV陽性例だけ細胞診用の標本を作製して細胞診断を追加します(下図)。
一次検診でHPV陽性であった症例のみに細胞診を追加するため、9割以上の対象者に細胞診が不要となります。その結果、検査感度を下げずに大幅な経費の削減ができる利点があります。また、検鏡す若スライド数が減るために、細胞検査士のストレスが滅り集中して検査できるため、見逃しが減る可能性も指摘されています。細胞診で異常が確認されればコルポ診を行い、細胞診が正常であれば1年後にHPVテストと細胞検査を再検査します。追加検査に細胞診でなくて、HPVテストを行いハイリスクHPVであればコルポ診、それ以外なら12ヵ月後のHPV検査という方法や、HPVテストと細胞診の両方を追加するオプションもあります。一次検診としてのHPVテストは検診としてはまだ試行段階であり、その有効性については今後の大規模研究の成果を待つ必要があります。
一次検診にHPVテストを用いた場合の二次検診法として、細胞診やHPVタイピング法ではなく、直接コルポ診検査を行うという選択肢も考えられます。これはコルポ診検査の費用が日本の10倍以上する欧米では受け入れられませんが、日本の場合には30歳以上のHPV陽性者に対する二次検診としてコルポ診を実施するという選択肢もあっていいと思われます。しかし、HPV陽性者は一般女性の約1割いると考えられるため、実際にこれを実施できる施設は少ないでしょう。また、実施する場合には検者がコルポ診に習熟していることが必要条件であり、コルポ診不適例には頭管内組織検査や細胞診を追加するなど慎重な対応が望まれます。
- 13. HPVワクチンの接種を行っている国の状況を教えてください。
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HPV16と18に関連する高度子宮頸部病変(中等度および高度異形成、上皮内がん、上皮内腺がん)および子宮頸がんの予防を主要複合エンドポイントとしたHPV4価ワクチンGardasil⑬の第3相試験の結果(FUTURE II Study)が2007年5月に報告されました。この試験にはブラジル、コロンビア、フィンランド、メキシコ、ノルウェー、デンマーク、ペルー、ポーランド、スウェーデン、プエルトリコ、シンガポール、アイルランド、イギリス、アメリカが参加しています。この無作為化二重盲検試験では15~26歳の女性、ワクチン群5β05例、プラセボ群5,260例の集団を対象に解析しています。ワクチンまたはプラセボの接種後3年間被検者を追跡しました。エンドポイントにおける有効性は、プロトコールに従った感受性集団(真にワクチンの効果を判定できる)では98%、無作為化された女性全員(感染の既往者と非既往者を含む)の集団では44%でした。また、この集団において、HPVの型にかかわらず(HPV16または18以外を含む)、すべての高度子宮頸部病変に対するワクチンの有効性は推定で17%でした。HPV16、18のいずれにも感染したことのない女性では、ワクチンを投与された群ではプラセボ投与群に比べて、高度子宮頸部病変の発症率が著明に低くなったことが示されました。
2008年12月末の段階で、HPVワクチンは4価、2価両者を併せて、世界108ヵ国で承認、使用されています。アメリカ、オーストラリアでの承認に引き続き、アジアの多くの国々、さらにEU諸国で承認されました。
オーストラリアでは2007年4月から、National HPV Vaccination Programによる12~26歳の女性全員を対象に無料での接種が始まりました。まず、12~13歳の女性に学校での接種が始められ、2008年には13~18歳までの学校終了までの期間に全員が無料で接種を受けられるようになりました。その後も、12~13歳での接種は継続されますし、26歳までの女性は地域のかかりつけ医(GP)や予防接種実施機関で、無料で接種ができます。国がワクチンの費用を提供し自治体が接種プログラムを運営しています。9歳末満の子どもや男性に対する接種はまだ承認されていません。オーストラリアにおけるHPV感染率は、若年女性において高く、とくに初交年齢の平均である16歳を超えると急激に上昇することが示されています。なお、26歳を超え45歳までの女性に対するHPV2価ワクチンの接種は、無料ではありませんが承認されました。
アメリカでは、国全体でのHPVワクチンに対する勧告はCDCのACIPによって出されています。しかし、オーストラリアのように全員を対象とするか否かは州によって、対応が異なっています。2007年11月の段階では、テキサス州、バージニア州など17州が無料での州全体を対象とした接種を議会で決定し実施に移行しています。一方、州によってはそのような法案は否決され、接種は個人の判断に任されています。ただし、子どものためのワクチン接種プログラム(VFC:Vaccines for Children program)がすべての州に対して、低所得者、マイノリティ、保険未加入者への接種を定めています。また、中・高所得者層が加入している民間医療保険会社の94%(2007年11月)がHPVワクチンの接種実施を認めています。したがって、実際には多くの女性がHPVワクチンの接種対象になっています。
カナダでは、2007年の国家予算配分においてHPVワクチンの接種プログラムに300万力ナダドルを計上し守した。これを受けて各州では資金を獲得し、プログラムを実施できるようになりました。オンタリオ州では2007年秋から8年生(中学2年生)の女子生徒を対象に無料の接種が始まりました。また、ノバスコシア州では7年生(中学1年生)、プリンスエドワード島では6年生に対するワクチン接種計画が始まっています。
イギリスでは2007年10月26日に、英国政府が合同予防接種委員会(JCVI:Joint Committee onVaccinadon and Immunization)の勧告を受けて、子宮頸がん予防のための国家HPVワクチンプログラムを導入すると発表しました。内容は前述の国々と同様で、2008年9月から12~13歳の女子生徒全員を対象にHPVワクチンの接種を開始し、2009年8月までにcatch-up(追いかけ)接種を18歳に拡大するキャンペーンを行うというものです。これを受けたスコットランド政府の発表によれば、このプログラムでは中学校で女子生徒への接種を行うということであり、年間30,000人が対象に含まれると見積もっています。2009年4月の時点で、イギリス国内における12歳女子へのワクチン接種率は、およそ90%に達しており、その背景には学校教育、テレビや携帯サイト、ホームページなどを利用した効果的な啓発の成功があります。
韓国では、2007年6月28日にKorean Food and Drug Administradon(KFDA)がHPV4価ワクチン接種を9~26歳の女性に対して承認するとともに、9~15歳の男性の性器沈賛の予防に関しても承認を行いました。The Korean Society of Gynecologic Oncology and Colposcopy(KSGOC)は、韓国女性のsexual debutの年齢を考慮して15~17歳での接種を勧告しています。しかし、国を始めとした行政からの財政支援はありません。
イギリスのCancer Research UKの研究では、子宮頸がん検診プログラムのおかげで、年間約5,000人の女性の命を救ってきたが、さらにHPVワクチンプログラムを導入することによって、子宮頸がんを発症するはずの2,800人のうち多くの人達を、がん治療することではなくHPV感染を予防することによって、結果的に子宮頸がんを予防することができるだろうと声明しています。2009年4月の時点でほとんどのEU諸国はHPVワクチンの無科接種またはそれに近い形での公費負担を決定し、順次、実施が始まっています。また、WHOは2009年4月に発行されたposition paperにおいて発展途上国を含めた世界全体でのHPVワクチンの使用を推奨し、国のワクチン接種プログラムに導入すること、財政的基盤を作ることの重要性を強調しています。さらに、発展途上国においてはGAVI(The Global Alliance for Vaccines and Immunaization)の財源により、赤道周囲の国々を対象に20ヵ国以上でHPVワクチンの接種が始まっています。
- 14. わが国でのHPVワクチン接種のこれまでの成績を教えてください。
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日本におけるHPVワクチンの臨床試験は、HPV4価ワクチン(Gardasil(F)、HPV6/11/16/18、寓有製薬・メルク社)、HPV2価ワクチン(Cervarix(33)、HPV16/18、グラクソ・スミスクライン社)ともに、2006年4月から開始され、現在継続中です。HPV2価ワクチンは2007年9月、HPV4価ワクチンは2007年12月に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に承認申請を行いました。承認申請時点では日本における試験成績は提出されておらず、ワクチンの予防効果は不明です。両社ともに2009年前半までに臨床試験を終えることを予定しており、その成績の解析結果を踏まえて、PMDAの承認がなされる見込みです。
Cervarix④は、日本における臨床試験の有効性に関してはまだ評価されていませんが、中間成績の一部がすでに公表されているので、海外の試験成績との比較を含めて以下に記します。日本におけるCervarix⑬の有効性、免疫原性およぴ安全性が日本人20~25歳女性でも裏づけられることを目的として臨床試験が行われています。海外のアジア、ヨーロッパ、南北アメリカでほぼ1/3ずつの被験者が組み入れられた試験のワクチン接種前のHPV-DNA陽性率はHPV16が5.4%、HPV18が2.3%でありましたが、日本における試験での陽性率は、HPV16が6.5%、HPV18が4.0%でした。日本でも20~25歳女性において欧米諸国並みにHPV16/18の感染があり、とくに、HPV18の感染率の高いことが明らかにされました。HPV18は増加傾向のある腺がんの発生と深い関連のあること、腺がんは子宮頸がん検診でも検出が難しいという事実から、このワクチンの存在は興味深いものがあります。
Cervarix⑬は、0、1、6ヵ月の間隔で3回筋肉内に接種することで、HPV感染防御に・必要な免疫応答を誘導するワクチンです。海外で行った試験(15~25歳対象)では、3回接種の1ヵ月後(初回接種の7ヵ月後)のHPV16およびHPV18に対する血清抗体陽転率は99.7%以上であり、接種前よりも顕著な抗体価の増加が認められました。日本人を対象とした臨床試験の中間解析結果においても、3回接種の1ヵ月後にHPV16およびHPV18に対して血清抗体陽転率は100%であり、3回接種の1ヵ月後には、海外の試験同様の高い抗体価の上昇を示しました。これらの試験結果から、本ワクチンは海外の被験者同様に日本人被験者でも高い免疫原性が期待されます。
ワクチンを含む医薬品の申請から承認までの期間は従来約5年程度を要していましたが、2007年10月ならびに2008年11月の参議院予算委員会において舛添厚労相はこの期間を1.5年に短縮すると明言しており、2009年の承認の可能性が高くなりました。したがって、2009年中には日本におけるHPVワクチンの接種成績が明らかになると思われます。

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